2026-07-23

アリババは採算の合う商売にした、テンセントは授業料を払った――プロダクトマネージャーの目で見る大手のAI分岐

ある四半期、アリババのクラウドAI収入が初めて外部収入の3割以上を占めた。同じ四半期、テンセントのAI新製品は約88億元を失い、年換算すれば350億元前後になる。

両社とも「all in AI」を掲げ、どちらも数千億を投じている。差はどうしてここまで開いたのか。

この記事では、プロダクトマネージャーの角度から、両社の2026年上半期のAI布陣を並べて見てみたい。結論を先に置いておく。両社ともモデルは弱くない。ベンチマークでどちらも見劣りしない。本当に差をつけたのは、もっと素朴なことだ――この AI は何のために使うのか、採算はどう合うのか、それを一言で説明できるかどうか。 この問いに、アリババは最初からきびきびと答えた。テンセントは大きく回り道をして、それなりの授業料を払い、ようやく最近コツをつかんだ。

まず二つのタイムラインを見る

まず2026年上半期の両社の動きを並べてみる。論評はしない。あなた自身が感じてほしい。

アリババ側:

テンセント側:

同じ時間の窓の中で、一方は決算説明会で収入比率を語り、もう一方は赤字を説明しながら、そっと船を乗り換えている。これはモデル能力の差ではない。差は別のところにある。読み進めてほしい。

アリババ:AI を採算の合う商売に仕立てた

「Token Hub」という名前そのものが答えだ。ATH のロジックは、AI を一本のサプライチェーンに分解することにある。最下層で token を作り(モデルを訓練し)、中間で token を供給し(クラウドと API で届け)、最上層で token を使う(Agent とアプリ)。会社全体が「token」という一語を中心に回っている。

こうすることの利点は、プロダクトマネージャーなら一目でわかる。それは全社に、採算を突き合わせられる北極星指標を定めたということだ。 token の消費量が伸びたか、クラウド収入の浸透率がどこまで来たか、四半期ごとに数字を出して語れる。使用量課金だから、勘定は明快だ。

Qwen のオープンソース化は、この盤面の入口だ。2026年4月時点で、Qwen シリーズの世界ダウンロード数は約10億に近づき、世界のオープンソースモデルダウンロードの半分以上を占めた。オープンソースは無料だ。狙いは、まず世界中の開発者に使わせ、慣れさせ、先に「供給」を敷き詰めることにある。

ここの勘定はこう計算される。モデルをオープンソース化して採用の面を広げれば、実際に走らせる推論需要が最後は自社クラウドに落ち、正真正銘の計算資源の請求書に変わる。ある開発者が今日ローカルで無料の Qwen を走らせても、明日ビジネスの量が増えれば、高い確率でクラウド上の API と計算資源を買いに行く。オープンソースは顧客獲得、クラウドはレジ台だ。

そして締めに入る。今年上半期、アリババの動きは明らかに「何でも無料」から「一番いいモデルは金を払え」へと転じた。フラッグシップの Qwen3.7-Max はクローズドソースに転じ、自社クラウド上でのみ API を開放する。オープンソースで市場を占め、クローズドソースとクラウドで賃料を取る。二層構造がしっかり噛み合っている。

プロダクトを作る人にとって、ここに一つの教訓がある。オープンソースは価値観ではなく、段階的なレバレッジだ。 アリババはオープンソースで世界の開発者の採用規模を手に入れ、エコシステムが立ち上がったら、クローズドソースのフラッグシップとクラウドインフラで収益化する。それぞれの一手で何を交換しているのかを、非常によくわかっている。

ついでに言えば、アリババと同じ陣営の Alipay も遊んではいない。AI 版 Alipay の「AlipayのAI『阿宝』」は7月初めに公開テストを始めた。一言で宅配便を出し、配車を呼び、料理を注文し、住宅積立金を照会する。その裏側も同じく「ミニプログラムの呼び出し+決済の連携」というやり方だ。つまり、アリババ側には水と鏟を売るインフラ商売だけでなく、C 向けスーパーアプリの Agent というラインにも張っているということだ。

テンセント:Yuanbao という落とし穴を踏んで、ようやく自分の AI がどこに根を張るべきかを悟った

テンセントの元手は中国で最も厚い。WeChat の十数億ユーザー、関係グラフ、決済、ミニプログラム、分配力で敵はいない。AI 時代に置けば、これは圧倒的な優位のはずだった。だが上半期に最も語る価値のある教訓は、まさに一つの落とし穴だった――Yuanbao だ。

Yuanbao は、テンセントが Doubao を対抗軸に「独立汎用アシスタント」を作った切り札だ。だがその月間アクティブは約 1.09億で、Doubao(3.15億)に大きく引き離された。Yuanbao はなぜ追いつけないのか。Doubao の背後には Douyin(抖音)があり、ショート動画の巨大なトラフィックでユーザーを流し込み、しかも赤字覚悟で補助金を出す。テンセントにもトラフィックはあるが、そのトラフィックは WeChat の中にあり、WeChat こそテンセントが最も迂闊に触れたくない場所だ。Yuanbao は独立アプリである以上、テンセントが自分の優位でない戦場(独立アシスタント)で Doubao と真正面からぶつかることを意味する。出遅れてもいて、追いつくのは難しい。

面白いのは、Yuanbao が脱落する一方で、テンセントの AI はむしろ別の二つの方向で挽回したことだ――共通点は、どちらも「独立アシスタント」をやらず、具体的なシーンの中に根を伸ばしたことにある。

一つは WorkBuddy、デスクトップオフィス Agent で、3月にリリースされた。その月間訪問数はほどなく国内 AI ネイティブオフィスエージェント首位となり、一人当たり token 消費は3ヶ月で十倍に増え、リテンションは6割前後を維持している。メディアの言い方はきわめて直截だ。「Yuanbao 失脚、WorkBuddy が後を継ぐ」。

もう一つは WeChat の中の Xiaowei だ。半年以上ためらった末、2026年6月、WeChat 自身の Agent「Xiaowei」がグレースケール内部テストを開始した。ここに注目すべきシグナルがある。この切り札を担ぐのは独立した Yuanbao ではなく、WeChat が自ら乗り出したことだ。かつて Yuanbao、Hunyuan、WeChat AI という三つのアイデンティティが互いにぶつかっていたが、今は方向が収束した――独立アシスタントを捨て、AI を自分がもともと強いシーンに埋め込む(オフィスは WorkBuddy、WeChat は Xiaowei)。 その代償として、Yuanbao の一年余りの投資はほぼ水の泡になった。これが授業料だ。

WeChat Agent は、この中で最も重い切り札だ。AI に WeChat の中で注文を手伝わせ、ミニプログラムを呼び出させ、サービスアカウントを処理させる。本当にうまく回れば、取引・関係グラフ・決済が三位一体になった閉ループになり、その威力は恐ろしい。これほど長く我慢してようやく動いたことも、WeChat という主戦場を触ることにテンセントがどれほど慎重かを物語る――これは典型的なイノベーターのジレンマだ。価値のある主戦場ほど、まだ成熟していない AI で軽々しく動かすことをためらう。

ただしこの切り札もテンセント固有のものではない。アリババと同じ陣営の Alipay の「阿宝」は7月初めにすでに公開テストに入り、同じく決済とミニプログラムを握っている。スーパーアプリの Agent という道では、WeChat の Xiaowei よりさらに一歩先んじている。テンセントの最も堀に近いあの分配優位が、まさに同じ規模の相手に奪われつつある。

逆向きの一手が、両社が置かれた段階を暴いた

面白いことに、2026年上半期、両社はオープンソースというこの一件で、ちょうど正反対の方向に進んだ。

アリババのフラッグシップはクローズドソースへ締めていき、Qwen3.7-Max はクラウド専用にした。テンセントの Hunyuan はオープンソースへ放し、Hy3 をそのまま Apache 2.0 にした。

同じ意思決定でも方向は逆、なのにどちらも正しい。両社が置かれた段階が違うからだ:

この二つの動きを並べて見ると、どんなモデル評価レポートを見るよりも問題をよく説明してくれる。ある会社の AI 戦略を判断するとき、オープンソースかどうかだけを見るな。今それが一体何を交換しているのかを見よ。

プロダクトマネージャーが注視する六つの次元

両社を一枚の表に並べると、差は一目瞭然だ。

次元アリババテンセント
北極星指標token 消費/クラウド収入浸透率、明確で最適化可能Yuanbao の月間アクティブからシーン Agent の使用量へ転換、校正したばかり
ビジネスモデル使用量課金、勘定が明快広告/オフィス課金/決済閉ループ、経路は模索中で現状はまだ赤字
向き合う相手開発者、企業(B 向け PaaS ロジック)消費者、職場、ソーシャル(C 向けシーンロジック)
成長エンジン供給側:開発者の採用が token を押し上げる需要側:Agent をオフィスと WeChat に埋め込む
クラウドインフラ+世界のオープンソースシェア関係グラフ+決済+ミニプログラム、ただし Alipay が同じ入口を奪いにきている
組織ATH に兵力を集中、CEO が陣頭指揮、指標の圧を強めるAI Lab を解散し Hunyuan に統合、Yuanbao は退場、資源をシーン Agent に張る

この表を一言でまとめると:アリババは生産手段を売っており、テンセントは AI を生活と仕事のシーンに詰め込んでいる。 アリババの勘定は最初から明快だった。テンセントの帳簿は、一年余りめくって、ようやく正しいページにたどり着いた。

この先二、三年、両社はどう進むか

アリババ:物語がより「資金調達向き」で、「AI=インフラ」というラインの中で最も安定して走る一社になる可能性が高い。

もし token が多くの人が言うように「新しい電力」になるなら、アリババが押さえているのは送電網運営会社のポジションだ。加えて Qwen の世界約10億のダウンロード数があり、海外展開と世界の開発者の心という点で、他社にはない持ち札を積み上げている。そして Alipay「阿宝」という C 向けスーパーアプリの Agent ラインは、アリババ陣営にインフラ以外にもう一本の手を加えることに等しい。

そのリスクは三箇所にある。一つは token の価格戦争で、各社が値下げを進めており、粗利は薄く削られる。二つは自社開発チップが NVIDIA 制限の残した空隙を埋められるか。Zhenwu M890 はまだ始まったばかりだ。三つはオープンソースとクローズドソースの両賭けの緊張で、フラッグシップがクローズドへ締まるほど、オープンソースコミュニティの求心力が削がれないか、遅かれ早かれ正面から向き合うことになる。だが方向は自己整合的で、指標は閉ループになっている。これがその最大の確実性だ。

テンセント:もう一つの人気汎用アシスタントを目標にするな。その機会は「シーン Agent」にある。

WorkBuddy はすでに一つのことを証明した。テンセントの AI は具体的なシーン(オフィス)に根を伸ばしさえすれば、量を出せるし、しかも首位まで行ける。次に本当に勝負を分けるのは、WeChat の中の Xiaowei がグレースケール内部テストから全量展開へ進み、本当に WeChat のメイン入口に埋め込めるかどうかだ。うまくいけば、WeChat のあの取引+関係グラフ+決済の閉ループがひとたび回り出し、フライホイールは恐ろしい。うまくいかなければ、中国で最良の分配も内部消耗の中で空回りする。目下さらに変数が増えた。Alipay「阿宝」がスーパーアプリ Agent で先んじており、WeChat のこの一戦はもはや自分が自分と競走するだけではなくなった。

この比較から、プロダクトを作る人は何を持ち帰れるか

この二社から離れて、自分たちのプロダクト作りに戻ろう。この二社の最大の対照は、実は同じ基礎的な宿題の表と裏だ。

アリババが安定して走れたのは、モデルが最強だからではない。最初から AI を全社が採算を突き合わせられる指標に翻訳し、それによって全員がどこに力を入れればいいかを知っていたからだ。テンセントが回り道をしたのも、技術がだめだからではない。一年余りを費やし、Yuanbao 一つを差し出して、ようやく「自分の AI 製品とは一体何なのか」を悟ったからだ――独立した汎用アシスタントを作るのではなく、自分がもともと強いシーンに埋め込むこと。

ポジショニングというものは、選び間違えれば、どれだけ資源があっても授業料になる。間違いを認められ、資源を正しい方向へ収束させ直せることは、それ自体が実力だ。

Yuanbao は一年余り燃やしてもまだ月間アクティブを追っている。WorkBuddy はリリース3ヶ月でオフィスエージェント首位になった。Xiaowei は宝を WeChat 自身へと張り直した。同じ会社の三つの AI、一つは授業料を払い続け、二つはシーンの中で挽回している。

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