クック退任前の最後の四半期、アップルは自社の需要予測につまずいた
7月30日、ティム・クックは在任中最後の決算説明会を主宰した。
彼はその場でこう警告した。9月期はiPhone、iPad、Macのいずれも供給制約を受け、しかもその制約が売上高に影響する。アップルのサプライチェーンで現在調整できる余地は平時より小さく、自社設計チップを製造する先端プロセスの生産能力にも不足がある。
同じ場で彼は、メモリチップの価格設定を「百年に一度の洪水」と呼び、アップルは本来値上げをしたくなかったが、メモリコストの指数関数的な上昇に追い込まれて値上げせざるを得なくなったと認めた。
決算発表後、アップル株は7%から8%下落した。この四半期のiPhone売上高は前年同期比22%増、次の四半期の売上高ガイダンスは9%から10%で、アナリストがそれまで見込んでいた12%を下回った。
この二つの数字を並べて初めて要点が見えてくる。22%は売れた分であり、9%から10%は作れる分だ。 その間の差は需要が消えたからではなく、モノを出せないからだ。クック自身が説明会でこの因果をきわめて率直に述べている。次四半期のガイダンスを下方修正したのは、まさに供給制約が売上高に影響するからだ。
売れすぎたせいでガイダンスを引き下げる。こういうことは滅多にない。
9月1日、ジョン・ターナスがCEOに就任し、クックはエグゼクティブ・チェアマンに退く。
一、彼は自分が最も得意なことでつまずいた
クックが1998年にアップルに入ったときの役職は、ワールドワイドオペレーション担当のシニアバイスプレジデントだった。スティーブ・ジョブズが彼を採ったのは、一つのことを解決するためだ。当時のアップルは在庫回転がひどく遅く、倉庫に数か月分の在庫が滞留していた。
クックは着任後、自社工場の大半を閉鎖して生産を外部に委託し、在庫回転を数か月から数日にまで圧縮した。この一式はのちに消費者向けエレクトロニクス業界全体の標準動作となり、同時に彼が後を継げた理由のすべてでもあった——彼はプロダクトの天才ではない。プロダクトを実際に作り上げ、しかも誰よりも安く作れる人間だった。
アップルを率いたこの15年で、彼はiPhone 4S以降のすべての世代のiPhone、Apple Watch、AirPods、Apple Pay、Vision Pro、そしてMacのインテルから自社設計チップへの移行を手がけてきた。
そして退任前の最後の四半期、アップルの問題は部品が足りないことだ。
この皮肉さはわざわざ説明するまでもない。だが本当に見るべきなのは皮肉ではなく、根本原因がどの環にあるのかだ。
二、根本原因はサプライチェーンではなく需要予測にある
クックは電話会議でこう明言している。これは普通の供給問題ではなく、問題は需要予測の側にある、と。
発言の趣旨はこうだ。iPhoneとMacの今回のプロダクトサイクルは想定を超えて強く、需要がアップル自身の見積もりの外側まで走った。サプライヤーが失態を演じたのではなく、アップル自身がここまで売れるとは読めなかった。
これはプロダクト判断の誤りであって、オペレーションの誤りではない。
半導体の生産能力は前もって押さえるものだ。来年モノを手にしたければ、今年のうちに発注を入れ、長期契約を結んでおかなければならない。どれだけ発注するかは、来年の販売数量をどう予測するかで決まる。予測という仕事は、どの会社でも購買の管轄ではない。プロダクトと事業の管轄だ。
予測が低ければ、生産能力は十分に押さえられない。需要が本当に立ち上がったころには、市場に買える枠はもう残っていない。この点は川上を見ればはっきりわかる。
- マイクロンの2026年のHBM(広帯域メモリ)の生産能力は、既存の価格協定に基づいてすでに完売している
- SKハイニックスは投資家に対し、同社の先端パッケージングのラインが2026年末まですべて予約済みだと伝えている
生産能力は買う金がないのではなく、そもそも買えない。 この局面では金が問題を解かない。枠は一年前に他社が押さえ切っているからだ。
さらに厳しいのは先端プロセスの側だ
クックは電話会議で一言だけ、別立てで触れている。アップルの自社設計チップを製造する先端プロセスの生産能力に不足がある、と。
こちらはメモリよりも解きにくい。メモリなら少なくとも複数のサプライヤーがあり、中国本土の生産能力も立ち上がりつつあるので、理屈のうえでは「もう一社探す」という選択肢が存在する。最先端ノードのウエハー生産能力にはその選択肢がない。世界中でそれができるラインは数えるほどしかなく、しかも列に並んでいるのはアップルだけではない。AIの計算資源を奪い合っているすべての企業がそこにいる。
アップルはその列の中でずっと前のほうにいる。TSMCの最先端ノードにおける長年のローンチカスタマーだからだ。だが「前のほうにいる」の並び順は発注量で決まり、その発注量はまた同じ問いに戻ってくる。一年前にいくつと申告したのか。
だから今回の二つのボトルネックは、実のところ同じボトルネックの二つの出口だ。メモリも先端プロセスも、「はるか前に押さえなければならず、押さえる量は予測で決まる」ものである。予測が低ければ、両端が同時に詰まる。
三、同じメモリ価格という一本の鎖で、四者四様の結末
ここ数日、私は同じ出来事の違う側面をずっと書いてきた。今日それが一つの輪として閉じた。
DRAMとNANDの価格は前年同期比で63%から75%上昇した。同じ鎖の上で、四社がまったく異なる四つの結果を手にしている。
| 企業 | メモリ価格高騰に対して何をしたか | 結果 |
|---|---|---|
| マイクロソフト | 4月に2026年の設備投資ガイダンスを約1900億まで引き上げ(メモリ価格が押し上げたと明言)、その後サーバー群の稼働率とデリバリープロセスの改善で約1750億まで押し戻した | 7月30日に時価総額が1日で約4500億ドル増加し、米国株市場の記録を更新 |
| Meta | 2四半期連続で設備投資を上方修正、通年ガイダンスは1300〜1450億 | フリーキャッシュフローが7.84億まで落ち込み、株価は9%下落 |
| Situational Awareness | 4倍のレバレッジでメモリと計算資源をロング | 7月30日に強制決済され、月間−67% |
| アップル | 生産能力を十分に押さえられず、値上げを迫られた | 株価は7%〜8%下落、次四半期ガイダンスは市場予想を下回る |
同じ外部変数、四つの異なる対処、四つの異なる結末。変数は共通で、結末はそれぞれの判断が引き換えに得たものだ。
マイクロソフトの一行がいちばん見る価値がある。4月にメモリ価格に押されて1900億まで積んだが、三か月後にはそこまで使う必要がないと言った。理由は、CPUとGPUのサーバー群の効率が上がり、既存のインフラでより多くを回せるようになったからだ。値上げと正面から戦うのではなく、自分の側の使用量を変えにいった。
アップルの立場は違う。iPhoneのメモリ使用量は「スケジューリングの最適化」で圧縮できるものではなく、ハードウェアの部品表(BOM)に固定で刻まれた一項目だ。動かせるのは二つしかない。前もって生産能力を押さえるか、値上げするか。一つ目を十分にやらなかったので、二つ目しか残らなかった。
四、生産能力の確保はプロダクトの意思決定であって、購買の作業ではない
たいていの会社は「数年先の川上の生産能力を押さえる」ことをサプライチェーン部門の仕事だと思っている。
それは違う。あれは賭けだ。賭けの対象は、この先二年の販売数量に対する自分たちの判断であり、しかも一度張ったら降りるのが難しい。結ぶのは長期契約で、量が少なければ違約金を払い、多ければ在庫が積み上がる。
この賭けを裁定できるのはプロダクトと事業だけだ。来年何をいくつ売るのかを知っているのは彼らしかいないからである。
難しさは時間のずれにある。プロダクトがまだ出来上がっておらず、市場の検証も済んでいない段階で、二年後の部材を先に買わなければならない。判断が当たっても誰も褒めない(モノがあるのは当たり前だ)。判断を外せば両側から痛む。少なければ欠品し、多ければ在庫を抱える。
しかもこの二つの間違いはコストがまったく非対称で、これこそが本当に難しい理由だ。
押さえすぎた場合、損失は確定的で計算できる。余分に払った金、寝かせたキャッシュ、減損すべき在庫。金額としては見苦しいが、それは読める帳票の上に現れる。
押さえ足りなかった場合、損失は目に見えない。買えなかった人たちはその時点では買う気だったが、三か月も待ってはくれない。彼らは去る。この損失はどの財務諸表にも載らないし、どれだけの規模なのかすら分からない。見えるのは売れたものだけで、本来売れたはずのものは見えない。
片方が可視で片方が不可視だからこそ、ほとんどの組織はこの意思決定で構造的に保守側へ傾く。多く買った金は追及されるが、少なく買ったせいで逃げた客は誰にも追及されない。アップルが今回つまずいたのはまさにこの方向だ。予測がランダムにずれたのではなく、安全な側へずれたのである。
私自身、小さなツールを作るときに同じ偏りを持っている。公開前、サーバーもクレジットも「たぶんこのくらいの人が使うだろう」で用意するが、その「たぶん」はいつも少なめの見積もりになる。多く用意した分の金は月末に自分の財布から出ていくが、少なく用意したせいでページが開けずに去った人がいたことは、そもそも私には分からないからだ。
アップルは今回、少なかった。しかも極端に少なかったわけではない。すでに約8000万台分の新型iPhoneの部品を押さえており、iPhone 18 Pro、Pro Max、そして最初の折りたたみiPhoneをカバーしている。折りたたみモデルの生産目標は1000万台まで引き上げられてもいる。問題は、需要がそれを上回ったことだ。
見落とされがちな動きを一つ付け加えておく。CNBCの7月2日の報道によれば、アップルは中国本土製のメモリチップの採用を評価しており、CXMT(長鑫)とYMTC(長江)がいずれも検討の対象に入っている。これは追い込まれた末の供給多様化だ。唯一の解が「もう一社、供給できる相手を探す」になった時点で、こちらの交渉力はもう残っていない。
五、「値上げしたくないが値上げせざるを得ない」はコスト構造の告白だ
クックは、アップルは値上げをしたくなかったが、メモリコストの指数関数的な上昇に迫られて値上げせざるを得なくなったと述べた。アナリストは、iPhone 18 Proの価格が200ドル引き上げられる可能性があると推測している。
この発言は正直だが、同時に一つのことを露呈してもいる。
あるプロダクトの部品表の中に、三つの条件を同時に満たす項目があるなら——コストに占める比率が高い、価格の変動が激しい、長期契約で固定していない——それは時限爆弾だ。爆発するかどうかは外部の市況だけで決まり、自分たちの実行力とは関係がない。
メモリはスマートフォンのBOMの中で、この三つをちょうど全部満たしている。
私が作っているものはこれ以上ないほど小さいが、この構造は小さなプロジェクトでもまったく同じだ。自分のツールに外部モデルのAPIをつないでいて、いちばん高い項目は推論の費用であり、その単価を私はまったくコントロールできない。もし当時のAPI価格でぴったり合うようにプロダクトの価格を決めていたら、サプライヤーが価格を改定した瞬間に粗利はゼロになる。しかも私は何も間違ったことをしていない。
できるのは価格を予測することではなく、設計の段階でこう問うことだ。この項目が倍になったら、自分のプロダクトはまだ成立するか。 成立しないなら、今のうちに使用量を圧縮するか、今のうちに価格に余裕を残すか、今のうちに長期価格を固定しにいくか。この三つはいずれもプロダクトを定義する時点でやらなければならない。値上げされた日に着手しても、もう間に合わない。
アップルが今回選んだのは、三つ目の失敗版だ。押さえはした。だが足りなかった。
六、彼は部品を買えないアップルを引き渡す
ターナスは50歳、2001年にアップルに入り、2021年からハードウェアエンジニアリングを統括してきた。クックは65歳、2011年にジョブズからこの会社を引き継いだ。
アップルにとって15年ぶりのCEO交代であり、その引き継ぎの時点にはきわめて具体的な問題が置かれている。9月に発表されるiPhone 18 Pro、Pro Max、そして最初の折りたたみiPhoneは、品薄になるかもしれず、値上げされるかもしれない。しかもその原因は工場にはなく、一年前の過小評価された販売予測にある。
面白いのは、後を継ぐのがハードウェアエンジニアリング出身の人物だという点だ。クックが引き継いだとき、アップルに必要だったのはプロダクトを作り上げる能力だった。いまアップルに必要なのは、おそらく別の何かだ。部材コストが一年で七割上がりうる環境で、一台のデバイスにメモリをどれだけ積むのか、いくらで売るのか、二年先の生産能力にどれだけ張るのかを、あらためて決めることである。
ターナスがこの問題をどう扱うのか、私には分からない。
だが一つ、この決算がすでに彼のために線を引いたことがある。この十数年、アップルのサプライチェーン能力は堀だった。他社にできないコストと供給を、アップルはやってのけた。だが川上が売り手市場になり、生産能力を二年先まで奪い合うようになり、いちばん逼迫した部材を数社しか供給できなくなったとき、「他社より上手く実行する」はもう決定的ではなくなる。決定的なのは「二年前にいくら張ったか」だ。
これはオペレーションの問題からプロダクトの問題へと戻る転換点だ。クックが引き渡すこの帳簿には、問題がはっきり書かれている。売れすぎることもまた、読み違いの一種である。
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